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植物系の変わり兜一覧
葉を2分割した大胆なデザイン

江戸時代の兜『鉄打出金箔押唐冠形兜(てつうちだしきんぱくおしとうかんなりかぶと)』。画像引用元:文化遺産オンライン
ツノのごとく兜の脇から伸びるのはカジノキという植物の葉っぱ。神事にも使われる神聖な植物で、家紋のデザインにもよく使われています(梶紋)。葉っぱを1枚ずつではなく、1枚を2分割して左右に配したところにデザインの妙を感じます。
シャキーン!!

戦国時代の兜『菖蒲脇立付烏帽子形兜(しょうぶわきだてつきえぼしなりかぶと)』(安土桃山時代)。画像引用元:東京富士美術館
一見すると植物がデザインされているようには見えない兜ですが、両脇からシャッキーンと伸びているのがそれです。
子どもの日に欠かせない菖蒲の葉っぱを模したものなのです。先述したように菖蒲は「尚武」「勝負」に通じるとして武家に好まれました。それにしてもちょっとトンガリ過ぎではないだろうか……。
ちなみに前立のドーナツみたいなのは蛇の目紋だそう。ということは加藤家ゆかりの兜かな?
さてさて、お次は信仰心をデザインに込めた兜たち。
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信仰心系の変わり兜一覧
まさか……お墓!?

江戸時代の兜『五輪塔六字名号頭立兜(ごりんとうろくじみょうごうずたてかぶと)』。画像引用元:文化遺産オンライン
兜の頭上にそそり立つのは、まさかのお墓!?かと思ってしまいますが、これは五輪塔という密教発祥の塔。
世界を作り出す5つの要素(地・水・風・火・空)を形象化したものだそう。中央には「南無阿弥陀仏」の文字も見えます。持ち主である今治藩主・松平定基(さだもと)はよほど信心深い人だったのでしょう。ちなみにこの巨大な五輪塔は1枚の木材でできているそうで、見た目ほどは重たくないみたいです。
「や」????

戦国時代の兜『黒漆塗六十二間筋兜(くろうるしぬりろくじゅうにけんすじかぶと)』(安土桃山時代)。画像引用元:戦国武将変わり兜図鑑
シンプルな前立ながらだいぶ奇抜です。ひらがなの「や」にも見えますが、これは漢字の「也(なり)」。
どういった意味が込められているかは不明だそうですが、じつに男らしい気概を感じます。持ち主とされる白石宗実(むねざね)は独眼竜の伊達政宗とその父・輝宗の二代にわたって仕えた伊達家の忠臣です。
燃えろ俺!

江戸時代の兜『鉄錆地六十二間椎形筋兜(てつさびじろくじゅうにけんしいなりすじかぶと)』。画像引用元:東京富士美術館
まるでドングリか半分閉じた番傘のようなトンガリ帽子っぽい兜。
前立はメラメラと燃える火焔とそこに浮かび上がる梵字。額をガードする目庇(まびさし)部分には繊細な装飾が施されてます。
いよいよ、これで最後!最後はジャンルにまとめきれなかった兜たちをいろいろご紹介します。
特定のジャンルに入らない変わり兜一覧
戦場の紳士

江戸時代の兜『白糸威笠子形兜(しらいとおどしかさこなりかぶと)』。画像引用元:五風十雨
まさかまさかのシルクハット!
この兜もかなり予想外。ハイカラ武将です。前面に描かれている文字は漢詩で、頭上にはなにかしら飾りをつける金具があるので、本来ならトップにもユニークな装飾が施されていたのかもしれません。
意表をつく巨大バサミ

戦国・江戸時代の兜『鉄錆地雑賀兜(てつさびじさいがかぶと)』。画像引用元:五風十雨
「そうだ!わしの兜にはピッカピカの大きなハサミをつけよ!」となぜ思ったのか?
オーソドックスな鍬形の兜の変化球って感じにしたかったのかな? 後世に残る奇抜さです。
歯医者さんじゃないよ

戦国・江戸時代の兜『銀溜塗釘抜形兜』(江戸時代)。画像引用元:五風十雨
つるりとした超シンプルな鉢にまさかのクギ抜き。ハサミがあるならクギ抜きがあってもいいじゃない。きっとカナヅチとかノコギリの兜だってどこかにある。クギ抜きという現代人からみるとちょっと「???」なモチーフですが、デザインとカラーリングが秀逸なためとてもカッコイイ兜なのが悔しい。
サインはV

戦国・江戸時代の兜『鉄錆地南蛮胴具足(てつさびじなんばんどうぐそく)』(安土桃山〜江戸時代)。画像引用元:文化遺産オンライン
シャッキーン!とV字を描くように両サイドから剣のようなものが伸びています。ちょっと伸びすぎなくらい伸びています。まるで変形ロボの頭部みたい。
頭ON頭

江戸時代の兜『茶糸威野郎頭形兜(ちゃいとおどしやろうずなりかぶと)』。画像引用元:東京国立博物館
カツラかな?
ご丁寧にハチマキまで締めてます。頭部にかぶる兜をあえて頭部のデザインにするというひねくれっぷりがいいですね。
もはや兜なのか?

江戸時代の兜『肉色塗入道頭形兜』。画像引用元:東京国立博物館
怖っ!
兜というか能面みたいです。 なんか笑ってるし……めちゃくちゃ福耳だし……。怖っ!
一説によるとこうした仮面系兜には武将の変身願望が込められているとかいないとか。それにしても斬新です。
指で弾きたくなる

戦国時代の兜『白糸威二枚胴具足(しらいとおどしにまいどうぐそく)』(安土桃山時代)。画像引用元:東京国立博物館
思わずビヨーンビヨーンと指で弾きたくなるクルッとした謎の前立。一体、モチーフになったものはなんなんでしょうね。
イカじゃないよ

江戸時代の兜『白糸威富士山形兜(しらいとおどしふじさんなりかぶと)』。画像引用元:東京国立博物館
一瞬、「黒いイカ?」と思ってしまいますが、イカじゃなくて富士山です。黒い富士山というのが目新しい感じがします。
セレブ系

キラキラです。すごくキラキラ。兜全体を螺鈿で仕立てるというお金と手間のかかった一品で、実用品ではなく芸術品でしょう。
和洋折衷

西洋の騎士がかぶっているような兜が目を引きますが、それもそのはず。この兜の鉢部分は海外から輸入された南蛮鉢。中央に十字架、その両サイドには洋剣が彫られておりさらに異国情緒たっぷり。鉢以外は日本国内でカスタムされた部分で見事な和洋折衷兜です。
さぁ、ついにこれでラスト兜!
怖いというよりちょっとユーモラス

江戸時代の兜といわれる『梵鐘形兜道成寺鬼女前立付(ぼんしょうなりかぶとどうじょうじきじょまえたてつき)』。画像引用元:togetter
「コラーー!」という声が聞こえてきそうな鬼の形相の女性が兜から飛び出すという斬新なデザインに驚かされます。
これは「安珍・清姫伝説」で知られる清姫の鬼女になった姿。盲目的一目惚れで美僧・安珍を追い回し、安珍が逃げ込んだ梵鐘に蛇となった清姫が絡みつく、という物語のヤマ場がそのまんま兜になってます。このシーンを兜に仕立てようと思ったその意図が気になるところです。
どどーんとたくさんのユニーク兜をご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか? お気に入りの兜は見つかりましたか? 自分のなかの「兜」というイメージをぶっ壊す、アバンギャルドな「変わり兜」の世界は驚きの連続です。