次は独眼竜なあのお方。
一度は見たことあるあの兜
伊達政宗所用の兜『黒漆塗六十二間筋兜(くろうるしぬりろくじゅうにけんすじかぶと)』(安土桃山時代)。画像引用元:仙台市教育委員会 文化財課
漆黒の鎧に黄金に光る異様なほどに細長い月が印象的なこの兜は、政宗の代名詞といっても過言ではないでしょう。
伊達政宗は戦国武将のなかでも特に人気が高く、近年でもアニメにゲームに大活躍。戦国時代も終わろうとしている時期に登場し、東北地方で勢力を拡大した政宗は泰平の世となった江戸時代、三代将軍・家光の時代まで生きていました。晩年の政宗さんは「戦国時代を生き抜いた最後の猛将」的ポジションを謳歌していたフシがありとてもほほえましい。
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伊達家の兜は代々、月を前立にしているそうですが、政宗のお父さん(輝宗)と政宗は細い三日月、それ以降は半月の前立です。

仙台市博物館に展示されている政宗の鎧と兜(中央)。その両脇には半月の前立がついた伊達家藩主の兜も。背後にある日の丸みたいな旗は、日輪をデザインした伊達家の旗。画像引用元:歴史プラス
なんで月なのかという説明はややこしいので割愛しますが、信仰心の表れとだけ述べておきます。
この超クールな政宗さんの鎧兜ですが、ある有名キャラクターのモデルになったというトリビアがあります。そのキャラクターとはこちら。

世界最高の悪役として名高い“暗黒卿”ダース・ベイダーです。
いわれてみると黒づくめなところとか、マスク部分のシルエットとか似ていますね。『スター・ウォーズ』を製作する際にスタッフが政宗の鎧兜について調べた、なんて逸話もあるんだそう。
次も政宗。
神のご加護を

伊達政宗所用の兜『黒漆塗六十二間筋兜(くろうるしぬりろくじゅうにけんすじかぶと)』(安土桃山時代)。画像引用元:戦国武将変わり兜図鑑
こちらも漆黒の鎧に黄金の前立が目立つ兜のセット。政宗の美的センスが光ります。政宗は漆黒の鎧を愛用していたのですが、どうやら政宗だけでなく部下たちも漆黒の鎧で統一されていたらしい。「黒の軍団」とか最高に格好いい!
こちらの前立は丸に文字らしきものがデザインされているのが特徴。この丸は日輪とも月輪ともいわれており、文字らしきものは「梵字(ぼんじ)」という仏教や密教に深く関わりのある文字です。これだけでも強い信仰心を感じますが、さらに兜の鉢にも当時の武将たちからあつく信仰された摩利支天(まりしてん)をはじめ神々の名が刻まれています。さらにさらに鎧の胴部分にも“武神”として崇められた八幡大菩薩が刻まれているそう。もはや全身これ神だらけ。これだけ守られていたら矢の一本だってかする気がしません。
お次は、こちらも大人気戦国武将の上杉謙信公です。
ゴツかわいい系ウサ耳

上杉謙信所用の兜『銀箔押張懸兎耳形兜(ぎんぱくおしはりがけうさぎみみなりかぶと)』(安土桃山時代)。画像引用元:KJCLUB
ウサ耳兜系のひとつですが、なんというか……ゴツい……!
前述したように、ぴょんぴょんと俊敏に動くウサギは武将に好まれ、兜にもウサギやウサ耳をデザインした飾りを施すこともよくありました。ただこれは俊敏というより強靭。でもウサ耳。
これは“軍神”上杉謙信公のものと伝えられている兜なんですが、まあ謙信公ならかわいい系よりゴツい系のほうが似合いそうです(個人の感想)。
ベースになっているのは「越中頭形兜(えっちゅうずなりかぶと)」と呼ばれる兜で、戦国武将・細川忠興(ただおき)が発案した実践に特化したシンプルな兜。忠興は嫉妬深いことで有名ですが、武器・武具に精通した武将としても有名なんです。
で、このシンプルな越中頭形の上に、ウサ耳をかたどった飾りが載っているわけです。額を守る「目庇(まびさし)」のところにはなんと眉毛! さらにその上にはシワもちゃんとある。
革でつくられた三日月もステキです。ウサギといえば月ですからね。全体に銀箔が施されているのですが、ウサ耳の内側だけ黒の漆塗というところに強い美的こだわりを感じます。
次も謙信公。
透け感が生むゴージャス

『金箔押唐草透風折烏帽子形兜(きんぱくおしからくさすかしかざおりえぼしなりかぶと)』(安土桃山時代)。画像引用元:NEWSポストセブン
唐草模様を透かしで表現し、さらにゴールドなもんだから、もう圧倒的なまでのゴージャス感。
そしてよく見ると中央に「無」の文字。
どんな意味があるのかちょっとわからないのですが、ストイックな雰囲気がします。変わった形の兜ですが、これは「折烏帽子(おりえぼし)」という武士のかぶりもの。これは飾り部分なので、これをスポッと兜の鉢にかぶせて使用したようです。
謙信公はほかにもゴールドの折烏帽子形兜があるのですが、なにかしらこのタイプに思い入れがあったんでしょうか。
もう一つおまけに謙信公。
なにかを受信しそう

上杉謙信所用の兜『鉄三枚張峯界形張懸兜(てつさんまいばりほうかいなりはりかけかぶと)』(安土桃山時代)
まるでパラボラアンテナのような不思議な造形の兜。
連なる山々をデザインしたものらしいのですが、素人目には山には見えない……。こちらも謙信公所用といわれています。
お次は「家康に過ぎたるもの」といわれたキング・オブ・猛将の兜。
敵を震え上がらせる威圧感

本多忠勝所用の兜『黒漆塗十二枚筋兜(くろうるしぬりじゅうにまいすじかぶと)』(安土桃山時代)。画像引用元:五風十雨
漆黒の炎のように天に向かって伸びる2本の太い鹿の角。
前立は歯ぎしりが聞こえてきそうな表情の獅子。
これはなんという豪壮さ、なんというイカツさ。
この本気度100パーセントな兜の持ち主は、長大な名槍「蜻蛉切(とんぼきり)」を振るい数々の戦場で勇名を馳せた猛将・本多忠勝です。巨大な鹿角の兜はもはや忠勝のトレードマーク。ちなみにこの角は和紙を張り合わせてつくったものなので、見た目ほど重たくないよう。
残された肖像画でもこの兜をかぶってます。ほらね。

うーむ、似合いすぎ。
兜と同じく鎧も漆黒でカッコいいですね。強キャラ感ハンパない。

画像引用元:ニューヨーク生活日記
首からかけた大きな数珠がまたね、スゴイですよね。キャラ立ちすぎじゃない?って思いますけど、実在の人物です。大きな数珠をかけていた理由は、戦場で屠った敵の魂を弔うためともいわれています。
次は史実よりマンガで有名になったカブキ者なあの人。
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