たけのこの里
まるでたけのこの里のようなとんがった頭部と、南蛮のシャレた帽子のように張り出した“つば”がとても個性的な兜です。面頬のピンと張った口ひげも威勢がいい。
この兜に合わせた鎧がまたステキ。ジャジャーン。
ビビッドなカラーリングが目を引きます。なんとなく和洋折衷というか独特の雰囲気が漂います。特に肩を覆う「袖」の部分の魚鱗にセンスが爆発してます。
スポンサーリンク
さてさて、こちらの鎧兜の持ち主は「戦国一のカブキ者」としてファンの多い前田慶次こと前田利益(とします)。マンガ『花の慶次』でのイメージが強い戦国武将です。
フィクションでは「大柄の猛将」という印象の前田慶次ですが、鎧のサイズから推測するとズバ抜けて大柄ということはなかったようです。また、前田慶次の豪快エピソードについても後世の創作が多くその実態は謎に満ちた人物です。でも「愛」の前立で有名な直江兼続さんとは本当にマブダチだったみたいです。
ということで次は義に生きた直江兼続さんのあの超有名な兜。
「愛」といっても「LOVE」じゃない
「愛」という一文字が強烈なインパクトを放つ直江兼続の兜は、有名兜トップ3にランクインするくらい知名度が高いんじゃないでしょうか。兼続といったらコレ。
兼続といえば小説やマンガ、ゲームの世界においても「義にあつい愛の武将」みたいなイメージですよね。先ほど登場した前田慶次や石田三成との友情は現代人の心もあつくさせます。主君・上杉景勝に対する岩より堅い忠誠心も人気の要因でしょう。
そんな兼続さんのトレードマークであるこの兜、「愛」を掲げるからには博愛精神に満ちた人だったんじゃないかと思いますよね? ところがこの「愛」は現代人がイメージする「愛」とはだいぶ違います。ラブ&ピースのラブじゃない。ではどんな意味が込められているのかというと諸説あるのですが大きく次の2つ。
- “軍神”上杉謙信も戦勝祈願に訪れた愛宕(あたご)神社に祀られた愛宕権現は火伏せの神および武神として信仰を集めていたので、「愛宕」の「愛」を拝借した。
- 信仰していた愛染明王(あいぜんみょうおう)から「愛」の一文字を拝借した。愛染明王は調伏を祈る神でもあり、武神としても信仰されたそう。
以上この2つが「愛」の由来として有力候補なんだとか。
愛にあふれた武将みたいなイメージがすっかり定着している兼続ですが、兜の「愛」に込められた意味はもっと猛々しいものだったようです。
ついでに、ここにも注目。
「愛」の前立の下の方にウネウネしたものがありますが、これは雲です。「瑞雲(ずいうん)」といって、いいことが起きる前に現れるラッキー雲!ここにも兼続の信仰心が現れているのです。
次は兼続の主君の兜。
輝く太陽
まるでお盆のようなまん丸でキンキラキンな前立がすごいインパクトを放っています。これはお盆じゃなくて日輪、つまりお天道さまです。お天道さまの下には瑞雲(ラッキー雲)が漂っています。さらに日輪のなかには「摩利支天」「大勝金剛」「毘沙門天」と武神として崇められた神々の名が見えます。神よ、我が武勇をご照覧あれ!
この信仰心あふれる兜の持ち主は、上杉謙信の養子となり米沢上杉家の二代目当主となった上杉景勝です。直江兼続の主君として有名なお方です。兼続の兜にも瑞雲が漂っていましたが、主君の景勝の兜にも瑞雲があるとかオソロイかよ。
次は大河ドラマで一躍知名度が上がった名軍師。
鉢かぶり姫ならぬお椀かぶり軍師
どっからどう見てもひっくり返したお椀。
お椀デザインの兜。タイトルにある「合子(ごうす)」とは蓋つき漆器椀のことで、「敵を飲み込む」という縁起担ぎの意味もあったとかなんとか。
こちらのシンプルながら個性的な兜の持ち主は、羽柴秀吉のブレーンとして天下取りに多大な貢献を果たした名軍師・黒田官兵衛(如水)です。官兵衛は戦に挑む際、いつもこのお椀兜をかぶっていたそう。神のごとき戦略を操る名軍師の兜は「如水の赤合子」と呼ばれ敵に恐れられたといわれてます。
官兵衛は臨終の際にこの大切な兜を信頼する重臣に与え「長政(官兵衛の息子)を頼む」と遺言したんだとか。いかに官兵衛がこの兜を大切にしていたかがわかります。
黒田家の家宝となったこのお椀兜ですが、その後、黒田家で起きたお家騒動「黒田騒動」の際に盛岡の南部家にお預け処分となった家老が持って行ったため、現在も本物はもりおか歴史文化館に所蔵されています。
官兵衛が黒田家の未来を託した兜は数奇な運命を辿ったようです。
次は官兵衛の息子さんのスゴイ兜。
次ページ:まさかのスケルトン兜&鎧!?加藤清正のもハイセンスな兜を所用していた