• 更新日:2019年10月20日
  • 公開日:2018年1月9日


変わり兜とは?


さてさてここで改めて「変わり兜」とはなんぞや? という説明を少々。

説明するまでもないかと思いますが、「兜」というのは戦闘の際に頭部を守るための防具のこと。日本における現存する最古の兜は古墳時代のものだそう。一般的に兜や鎧ってこんなイメージがあるんじゃないでしょうか?

戦国時代の具足『白糸威肩赤胴丸 (しろいとおどしかたあかどうまる)』
『白糸威肩赤胴丸 (しろいとおどしかたあかどうまる)』。画像引用元:この世は夢のごとくに候

これは南北朝時代から室町時代にかけて使用された典型的なスタイルの兜&鎧。『平家物語』に登場する源平の武者たちもこんなの着てますよね。

兜の飾りも「鍬形(くわがた)」と呼ばれるクワガタムシの角みたいなものがポピュラーでした。それが群雄割拠の戦国時代になると兜のデザインは一気にバラエティ豊かになります。

先ほどご紹介したように、魚や貝、動物、虫などの飾りをつけたり、信仰する宗教に関係するモチーフをつけたり、はたまた兜の鉢の表面に毛を植えたりなど、さまざまな工夫を施した兜「変わり兜」が登場するのです。

「我こそが天下を取る!」と野望に燃える武将たちにとって自己の武勇をアピールするのは大切なこと。自己主張の方法として個性的な兜が誕生したのです。武将たちは己の美意識、信仰心、闘争心、克己心などなどさまざまな思いを変わり兜に込めたのです。

ということで、お次は有名戦国武将たちの変わり兜をご紹介!

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あの天下人の兜はどんなもの?有名戦国武将たちのセンスに刮目せよ!


さて、まずは織田信長の後継者となり関白として天下を治めた豊臣秀吉の兜から。

秀吉の兜といったらコレ!

豊臣秀吉所用の兜『馬藺後立兜(ばりんうしろだてかぶと)』
豊臣秀吉所用の兜『馬藺後立兜(ばりんうしろだてかぶと)』(複製)。画像引用元:名古屋市役所
兜の後ろから伸びる29本の線。まるで後光のよう。

兜の名称にある「馬藺(ばりん)」というのは、「ネジアヤメ」というアヤメ科の植物で、「尚武(武を尊ぶ)」に通じることから武家で縁起物とされた菖蒲の仲間です。カラーリングこそ漆黒とシックですが、デザインはかなり奇抜で派手好きの秀吉らしさがあふれています。

なお、この兜は秀吉が行った「九州攻め」で功をあげた西村重就(しげなり)という武将に褒美として与えられたんだとか。こんなのもらったらうれしいよなー。

次も秀吉。

あの有名ゲームの秀吉も着用

豊臣秀吉所用の兜『黒鉄地払子形後立兜(くろてつじほっすなりうしろだてかぶと)』
豊臣秀吉所用の兜『黒鉄地払子形後立兜(くろてつじほっすなりうしろだてかぶと)』(安土桃山時代)。画像引用元:戦国武将変わり兜図鑑
トウモロコシのひげ?

これは「払子(ほっす)」という法具を表現した飾りで、ヤクという動物の毛でできています。ふっさふさですね。兜のデザインも僧侶がかぶる頭巾を模したものと僧侶関係づくし。

この兜は大人気ゲーム『戦国無双』シリーズに登場する秀吉が着用しているもののモデルにもなっています。

戦国無双の豊臣秀吉
ホントにこんなのかぶってたんだ、という驚き。画像引用元:戦国無双 真田丸
またも秀吉。

それ盛り付けちゃう!?

豊臣秀吉所用の兜『黒熊植椎形兜(くろくまうえしいなりかぶと)』
豊臣秀吉所用の兜『黒熊植椎形兜(くろくまうえしいなりかぶと)』(安土桃山時代)。画像引用元:戦国武将変わり兜図鑑
頭上に金色の軍配が2本もブッ刺さっています

この発想はなかなかできない。これは相当に奇抜。さすがアイデアマンで派手好きの秀吉、といったところでしょうか。兜の鉢にもクマの毛が植えられていて触ったら気持ちよさそうです。

セットの鎧はこちら。

戦国時代の具足『銀伊予札白糸威胴丸具足(ぎんいよざねしらいとおどしどうぐそく)』
『銀伊予札白糸威胴丸具足(ぎんいよざねしらいとおどしどうぐそく)』。画像引用元:戦国武将変わり兜図鑑
鎧もどことなく垢抜けていてシャレてますね。

こちらのアバンギャルドな兜と鎧は、豊臣秀吉から“独眼竜”伊達政宗に下賜されたものだそう。これをもらった時の政宗サマのリアクションが知りたい。

次は戦国乱世に終止符を打ち江戸幕府を開いた天下人・徳川家康の兜をどうぞ。

重厚感がヤバめ

徳川家康所用の兜『水牛角黒漆塗兜(すいぎゅうつのくろうるしぬりかぶと)』
徳川家康所用の兜『水牛角黒漆塗兜(すいぎゅうつのくろうるしぬりかぶと)』(安土桃山時代)。画像引用元:戦国武将変わり兜図鑑
目を引く巨大なツノ

保守的なイメージがありますが家康公も当時流行りの変わり兜を持ってました。そのひとつがこれ。ツノは桐でつくられており、水牛のツノを模しています。兜の鉢にクマの毛が植えられているところが個性的。さらに、鎧だって毛むくじゃら。

戦国時代の具足『熊毛植黒糸威二枚胴具足』
徳川家康所用の兜『熊毛植黒糸威二枚胴具足』。画像引用元:tumblr.
クマが持つ圧倒的パワーにあやかろうと思ったんでしょうか。顔面を守る「面頬(めんぼう)」の朱色がアクセントカラーとして効いてます。

ちなみにこの兜にちなんで家康には「関東の猛牛」という格好いいあだ名があったそうな。強そうだけど天下は取れなさそうな雰囲気がするこのあだ名、嫌いじゃない。

次も家康公。

刺さりそう

徳川家康所用の兜『黒漆塗一の谷形大釘後立兜(くろうるしぬりいちのたになりおおくぎうしろだてかぶと)』
徳川家康所用の兜『黒漆塗一の谷形大釘後立兜(くろうるしぬりいちのたになりおおくぎうしろだてかぶと)』(安土桃山時代)
これまたとんがったデザインの兜。実際にとんがってます

兜の頭頂部にある壁みたいなものは「一の谷」と呼ばれる飾りで、かの源義経が騎馬で駆け下り奇襲を成功させた険峻な一の谷をデザイン化したものです。当時かなり流行したらしく、いろんな武将が「一の谷」の兜をかぶっていたもよう。日本人は大昔から義経が大好きです。

それより目立つシュラスコの串みたいなものは「大釘(おおくぎ)」をデザインした後立(兜の後につける飾り)。硬いものでも貫いてしまう釘は、戦場での縁起物と考えられていたそうな。

一見すると金属製に見えますが、金属製なのは鉢部分だけで「一の谷」は革製、「大釘」は木製です。異素材ミックス兜とかオサレですね。

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